「副業を始めたいけど、会社が認めてくれない」
会社が就業規則で副業を禁止しているため、副業を始めたくても仕方なく諦めた・・・そんな人も多いと思います。
かつての日本では副業をすると「不真面目だ」とレッテルを貼られることもありましたが、令和の今は、国が副業を認めていますよね。
2018年1月に厚生労働省が「モデル就業規則」を改訂し、原則禁止だった副業を、原則OKへと一気に方向転換。
政府のお墨付きをもらったことで、副業元年となった2018年以降、副業ブームが広まりました。
ところがいまだに「副業禁止または許可制」の会社が多く、なぜ副業を禁止するか疑問ですよね。
そこで、会社が副業禁止する5つの理由と、バレたら懲戒覚悟の3つのNGなどについて紹介します。
そもそも法律は副業を禁止していない
まず、そもそも法律は副業を禁止していません。
“>日本国憲法の第22条1項に「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転および職業選択の自由を有する」と規定されていて、法律で「職業選択の自由」が守られています。
労働基準法などの労働関連の法律も副業禁止の規定はなく、“>過去の裁判例では「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由である」と示しているので、勤務時間外に何をするかは自由です。
このように憲法も労働法も副業を禁止していないため、副業しても法律違反にはなりません。
※公務員は、会社員と違って国民全体の奉仕者ということで、国家公務員法や地方公務員法で副業禁止となっています。
会社が副業を禁止する5つの理由
ここでは会社が副業を禁止する5つの理由について説明します。
前置きとして、日本は終身雇用制など保守的な企業風土のせいか副業一切禁止が当たり前でしたが、令和の新時代の今、そういった価値観は崩壊。
にもかかわらず、国が副業解禁を促進しているのに対して副業禁止から副業OKに転換する企業はまだ少数。
“>2020年に経団連が行った調査によると、副業OKの会社は約22%、つまり8割近くがいまだ副業禁止という結果で、世の中の多くの会社が副業禁止です。
副業OKの会社は、ソフトバンクやサイボウズなど副業を受け入れやすいIT企業のほかは、中小企業より大企業のほうが早く浸透しつつあります。
具体的にはロート製薬、丸紅、日産自動車、アサヒビールなどで、銀行・保険会社・製薬会社・情報通信業など今まで副業禁止だった保守的な業界の大企業も副業OKを表明。
中小企業の経営者は保守的で副業を受け入れがたいのでしょうか。
憲法で職業選択の自由が規定されているのに、会社員がプライベートで働くことを禁止したり許可制にするのはおかしいですよね。
“>2018年10月にマクロミルが行った調査によると、副業を始めたい会社員は半数近い44%もいて、副業を禁止する企業への印象も83%が「魅力がない」と答えています。
副業を始めたい会社員たちの前に立ちはだかる、旧態依然とした働き方のルール・・・その中にある、会社が副業を禁止する5つの理由がこちらです。
①長時間労働・過重労働を助長し、本業に支障をきたすから
②労働時間を把握する義務を果たせないから
③情報漏洩のリスクが高まるから
④競業で副業すると利益相反につながるから
⑤人材の流出を防ぎたいから
1つずつ詳しく説明していきますね。
①長時間労働・過重労働を助長し、本業に支障をきたすから
会社員が副業する場合、就業時間後や休日に働くことになり、長時間・過重労働を助長することに繋がります。
プライベートに充分な休息をとらなければ、疲れが残ったままで本業に支障をきたす恐れがあるので、会社にとってデメリットでしかない副業は禁止に。
本業に集中してパフォーマンスを100%発揮してほしいというのが会社の本音でしょう。
また、会社は社員を生涯守るから、社員は会社に生涯尽くすべき、副業するなという、終身雇用や年功序列といった古い思想が根強く残ってることも考えられます。
②労働時間を把握する義務を果たせないから
企業には従業員の安全や健康に配慮しなけれないけない「安全配慮義務」があり、社員の病気やケガ・事故などが起きると損害賠償の責任を負う場合があります。
「安全配慮義務」には作業環境と健康管理という2つの要素があり、健康管理の中には「長時間労働の防止」が含まれていて、社員の労働時間を把握できていないと労働基準監督署から指摘される恐れが。
社員が副業をすると労働時間を把握・管理できなくなり、「安全配慮義務」を果たせないから、トラブルを避ける手段として副業禁止にするんですね。
③情報漏洩のリスクが高まるから
本業で得たスキルや知識を副業先で使うことによって、故意でなくとも本業の顧客情報や製品情報、ノウハウなど社外秘が漏洩してしまう可能性があります。
例えば顧客情報が流出してしまった場合、個人情報保護法違反などに問われ、本業はもっとも大切な信用を失いかねません。
そのため、情報漏洩によって会社が窮地に陥らないよう副業禁止にするケースは多いです。
④競業で副業すると利益相反につながるから
副業先が本業の競業だった場合、利益相反につながり、本業は大きなダメージを受ける可能性が高いので副業禁止にしているケースも多いです。
社員のスキルや知識がライバル企業に知られてしまい、技術流出によって本業の競争力が奪われる危険があります。
⑤人材の流出を防ぎたいから
「人材の流出を防ぎたいから」が副業禁止の一番の理由という会社も多いかもしれません。
副業を始めたことは行動力を示し、副業で稼げるということは、優秀で能力があることを証明しています。
そんな優れた人材を、会社は手放したくないというのが本音。
まず副業をやってる時点で自立志向が強い傾向があるので、副業がきっかけで転職やヘッドハンティング、独立なんてされたら、会社にとって迷惑以外の何者でもありません。
外の世界に目を向けず、会社の中だけで能力を発揮してほしいのが正直なところなので、副業禁止にしています。
経営者が副業の必要性を理解してない?
終身雇用が崩れ、給与も上がりにくくなっている今、会社員は副業でも収入を得たいと切実に願っています。
しかし50代~60代の経営陣は本業だけ一生懸命やれば高収入が得られた世代なので、副業の必要性を理解できないのかもしれません。
国が今までの副業禁止から副業OKへと正反対に方針転換したので、経営者の考え方や会社の仕組みが、変化に追い付けないでいる部分もありそうです。
就業規則に違反して副業した時の罰則
ここでは、就業規則に違反して副業した時の罰則について説明します。
会社員の副業は、就業規則に違反すると会社のルールによる罰則が課せられ、懲戒処分の重い順にこれらが通例です。
①戒告、譴責(けんせき)
②減給
③出勤停止
④降格
⑤解雇(諭旨解雇、懲戒解雇)
1つずつ詳しく説明していきますね。
①戒告、譴責(けんせき)
戒告、譴責(けんせき)は、厳重注意で始末書を提出すればそれで済むような、もっとも軽い懲戒処分です。
②減給
減給は、賃金総額の10%(“>労働基準法第91条)が上限で給料が減ります。
※公務員はさらに重く最大20%減給。
③出勤停止
出勤停止は、わかりやすく言えば自宅待機ですが、痛いのはその間は給料が一切もらえないことで、生活に困るからと無断でアルバイトしてバレたら懲戒解雇の可能性があります。
気になる期間は、懲戒対象の行為に見合う合理的な期間とし、公務員の場合は上限1年です。
④降格
降格は、役職と権限を失うだけでなく、給料も下がってかなりの痛手となります。
⑤解雇(諭旨解雇、懲戒解雇)
解雇は、諭旨解雇と懲戒解雇の2種類あり、懲戒解雇がもっとも重い懲戒処分です。
諭旨解雇
諭旨解雇は、自主退職を促す処分で、退職金も支払われます。
形式上は自分から会社を辞めているのでキャリアには傷が付かず、退職金も満額支払われるのが一般的です。
懲戒解雇
懲戒解雇は、いわゆるクビで、退職金も期待できません。
秩序を乱した責任を取らされて強制的に退職させられるうえ、退職金は減額もしくはゼロ、しかも履歴書への記載義務のあるため再就職に不利。
何度注意されても副業をやめなかったり、情報漏洩などで会社に大きな損失を与えたなどの悪質なケースは、もっとも重い解雇処分になる可能性が高いです。
バレたら懲戒覚悟の3つのNG
ここでは、バレたら懲戒覚悟の3つのNGを紹介します。
就業規則に副業禁止規定がない場合、副業しても原則としてペナルティは受けないですが、今から紹介するNGケースをやらかしてしまうと、副業禁止の会社でも副業OKの会社でも懲戒処分の対象なるので覚えておきましょう。
①本業に支障が出た
副業をやりすぎて疲労や睡眠不足で本業に集中できてない、遅刻や欠勤をする、やたらと有給を取る、本業の最中に副業をする、やっつけ仕事になるなど、本業に支障が出た場合は懲戒処分の対象になります。
逆に、週末の塾講師や、日雇いの引っ越しバイト、メルカリで不用品を売って稼ぐなど、本業に支障がなく損害も与えていなければ、上司から注意されるくらいで済むかもしれません。
しかし明らかに本業に支障をきたすようになると懲戒処分はもちろん、会社はいつクビにしても良いように業務共有やバックアップを強化したり、使い捨て人材として扱うようになる場合もあるので、度を超えた副業のやりすぎに注意です。
②情報漏洩や信用失墜など損害を与えた
本業で得たスキルや知識を副業先で使うことによって、故意でなくとも本業の顧客情報や製品情報、ノウハウなど社外秘が漏洩してしまう可能性があります。
例えば顧客情報が流出してしまった場合、個人情報保護法違反などに問われ、本業はもっとも大切な信用を失いかねません。
情報漏洩や信用失墜などで会社に損害を与えることは絶対NGで、背任性が高いと懲戒解雇もありえます。
また、詐欺や詐欺まがいの副業ももちろん絶対NGで、解雇の理由になるでしょう。
③競業で副業した
競業企業で副業したり、本業のかたわら会社を設立して本業の取引先と取引することは、絶対NG。
競業企業に機密情報を漏洩して本業に莫大な損害を与えたとなれば、降格や解雇などかなり重い懲戒処分が科される可能性が高いです。
競合行為を禁ずる「競業避止義務」に違反したということで、損害賠償を請求される可能性も。
懲戒処分にならないポイント
懲戒処分になる3つのNGケースがある一方で、“>厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」には、懲戒処分にならないポイントが記載されています。
それによると、就業規則に抵触したとしても、職場秩序への悪影響がなかったり、本業に支障をきたしていなければ、過去の裁判で懲戒処分を認めていない傾向にあるようです。
情報漏洩や信用失墜、競業避止義務違反が絶対NGなのは当然として、本業に支障をきたさないで副業することが大切ということですね。
また、副業がバレるとヤバいと思っている方がいますが、副業がバレるのは稼ぎ始めてからです。
故に、最終的に副業が禁止されてもバレなければ良いですし、バレるのは稼ぎ始めてからなので、臆することなくまずは取り組むべきですね。
どうしてもバレることが心配な方は、下記記事で会社にバレない副業を紹介しているので、1度読んでみてください。
副業のメリットは会社員と企業、両方にある
まだまだ副業禁止の企業が多いですが、実は会社員と企業その両方に多くのメリットがあります。
会社員にとっての副業のメリットは、収入アップはもちろん、働きながら別の仕事のスキルや経験を得られ、先行き不透明な中リスクヘッジになること。
また、働きながら転職や起業の準備ができるので、少ないリスクで自己実現を追求しやすいことです。
企業のメリットは、社員が本業だけでは得られないスキルや知識、人脈を得ることができ、それらが企業の事業拡大や競争力アップにつながること。
ただ、そうは言っても副業禁止の企業は、メリットよりもデメリットの方が大きいと考えているのでしょうね。
まとめ
会社が副業禁止する5つの理由と、バレたら懲戒覚悟の3つのNGなどについて紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
国も後押しする副業解禁ですが、8割近くの会社が副業に消極的です。
会社が副業禁止する理由は、労働時間が増えて本業に支障をきたす心配、情報漏洩や競業避止義務違反による会社への損害の恐れ、人材の流出を防ぎたいから。
憲法は職業選択の自由を保障しているので、副業禁止の会社で副業しても法律違反にはなりません。
ただし、就業規則に違反すると懲戒処分が課せられ、特に本業に支障をきたしたり、情報漏洩などで会社に損害を与えると、処分が重く解雇もあるので注意。
副業禁止、許可制、解禁など会社によって違うので、副業を始める際は就業規則や労働契約を確認しましょう。
今はまだ副業禁止の会社が多いですが、かつてクールビズを政府が推奨したことで夏はノーネクタイが浸透していったように、副業OK当たり前の時代が近い将来やってくると思います。
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